敬語の動詞変換表|尊敬語・謙譲語・丁寧語を一覧で比較
敬語で最も混乱しやすいのが動詞の変換です。同じ「行く」でも尊敬語なら「いらっしゃる」、謙譲語なら「参る」と、相手と自分のどちらの動作かで使い分ける必要があります。この記事では、ビジネスで頻出する動詞を中心に、尊敬語・謙譲語・丁寧語の3種類を一覧表で比較します。
敬語動詞の使い分けルール
一覧表を見る前に、基本ルールを確認しましょう。
- 尊敬語:相手(上司・取引先・お客様)の動作に使う
- 謙譲語:自分(自社の人間を含む)の動作に使う
- 丁寧語:動作の主語に関係なく、聞き手に対する丁寧さを示す
例文で確認します。
- 「部長がおっしゃったように」(部長の動作 → 尊敬語)
- 「私から申し上げた通り」(自分の動作 → 謙譲語)
- 「彼が言いました」(丁寧に述べるだけ → 丁寧語)
主要動詞の敬語変換一覧表
移動に関する動詞
| 普通語 | 尊敬語 | 謙譲語 | 丁寧語 |
|---|---|---|---|
| 行く | いらっしゃる・おいでになる | 参る・伺う | 行きます |
| 来る | いらっしゃる・おいでになる・お越しになる | 参る | 来ます |
| いる | いらっしゃる・おいでになる | おる | います |
| 帰る | お帰りになる | 失礼する・おいとまする | 帰ります |
| 訪ねる | お訪ねになる | 伺う・お訪ねする | 訪ねます |
発言・伝達に関する動詞
| 普通語 | 尊敬語 | 謙譲語 | 丁寧語 |
|---|---|---|---|
| 言う | おっしゃる | 申す・申し上げる | 言います |
| 聞く | お聞きになる | 伺う・拝聴する・お聞きする | 聞きます |
| 話す | お話しになる | お話しする・申す | 話します |
| 伝える | お伝えになる | 申し伝える | 伝えます |
| 尋ねる | お尋ねになる | 伺う・お尋ねする | 尋ねます |
飲食に関する動詞
| 普通語 | 尊敬語 | 謙譲語 | 丁寧語 |
|---|---|---|---|
| 食べる | 召し上がる | いただく | 食べます |
| 飲む | 召し上がる | いただく | 飲みます |
| もらう | お受け取りになる | いただく・頂戴する | もらいます |
| あげる | お与えになる | 差し上げる | あげます |
見る・読む・書くに関する動詞
| 普通語 | 尊敬語 | 謙譲語 | 丁寧語 |
|---|---|---|---|
| 見る | ご覧になる | 拝見する | 見ます |
| 読む | お読みになる | 拝読する | 読みます |
| 書く | お書きになる | お書きする | 書きます |
| 見せる | お見せになる | お目にかける・ご覧に入れる | 見せます |
その他の頻出動詞
| 普通語 | 尊敬語 | 謙譲語 | 丁寧語 |
|---|---|---|---|
| する | なさる | いたす | します |
| くれる | くださる | - | くれます |
| 知る | ご存じだ | 存じる・存じ上げる | 知っています |
| 思う | お思いになる・思われる | 存じる | 思います |
| 会う | お会いになる | お目にかかる・お会いする | 会います |
| 待つ | お待ちになる | お待ちする | 待ちます |
| 座る | おかけになる | - | 座ります |
| 着る | お召しになる | - | 着ます |
| 寝る | お休みになる | - | 寝ます |
| 死ぬ | お亡くなりになる | - | 亡くなりました |
| 借りる | お借りになる | 拝借する・お借りする | 借ります |
場面別の使い分け例文
取引先との会話
取引先の人が主語の場合は尊敬語、自分や自社の人が主語の場合は謙譲語を使います。
- 「田中様がおっしゃった件について、弊社で検討いたしました」
- 「先日お越しいただいた際の資料をお送りいたします」
- 「御社の山田様はご存じでしょうか。私は以前お目にかかったことがございます」
社内での会話
上司が主語のときは尊敬語、自分が主語のときは謙譲語を使います。ただし社外の人に対して話すときは、自社の上司にも謙譲語を使います。
社内での会話:
- 「部長は今、会議室にいらっしゃいます」(上司に尊敬語)
社外の人に自社の上司のことを話す場合:
- 「部長の田中は、ただいま席を外しております」(社外の人の前では自社の人間に謙譲語)
この切り替えはビジネス敬語の中でも特に重要なポイントです。
電話応対
電話では相手の表情が見えないため、より丁寧な敬語が求められます。
- 「お電話ありがとうございます。田中が承ります」
- 「あいにく佐藤は外出しております。戻り次第、こちらからご連絡いたします」
- 「もう一度おっしゃっていただけますか」
間違えやすい動詞変換
「いらっしゃる」の混同
「いらっしゃる」は「行く・来る・いる」の3つの尊敬語を兼ねます。文脈で判断できることがほとんどですが、紛らわしい場合は別の表現を使いましょう。
- 「来る」を明確にしたい → 「お越しになる」「お見えになる」
- 「いる」を明確にしたい → 「おいでになる」
「伺う」と「参る」の混同
どちらも「行く」の謙譲語ですが、「伺う」は敬意の対象がいる場所へ行くとき、「参る」はそれ以外のときに使います。
- 「御社に伺います」(取引先に行く → 伺う)
- 「東京に参ります」(場所自体に敬意はない → 参る)
「おる」と「いる」の使い分け
「おる」は「いる」の謙譲語ですが、方言で丁寧語として使われる地域もあります。標準的なビジネス敬語としては、自分側の人間について「おります」と使うのが正しい用法です。
- 正:「私はここにおります」(自分の存在を謙譲)
- 正:「担当者は席を外しております」(自社の人間について謙譲)
- 注意:「先生が教室におられます」(関西では使われるが、標準語としては「いらっしゃいます」が一般的)
覚えるためのコツ
対で覚える
尊敬語と謙譲語をセットで覚えると効率的です。
- いらっしゃる(尊敬)⇔ 参る・伺う(謙譲)
- おっしゃる(尊敬)⇔ 申す・申し上げる(謙譲)
- 召し上がる(尊敬)⇔ いただく(謙譲)
- ご覧になる(尊敬)⇔ 拝見する(謙譲)
- なさる(尊敬)⇔ いたす(謙譲)
- くださる(尊敬)⇔ 差し上げる(謙譲)
主語で判断する
迷ったら「この動作の主語は誰か」を確認しましょう。
- 主語が相手・相手側の人 → 尊敬語
- 主語が自分・自分側の人 → 謙譲語
社外向けは「身内を低く」
社外の人に話すとき、自社の上司や同僚は「身内」扱いになります。上司の動作でも謙譲語を使うのがビジネスマナーです。
- 社外向け:「部長の鈴木が申しておりました」
- 社内向け:「鈴木部長がおっしゃっていました」
まとめ
敬語の動詞変換は、主語が誰かを意識するだけで正しく使い分けられます。まずは頻出の動詞ペアを覚え、場面ごとに尊敬語と謙譲語を切り替える練習をしましょう。一覧表を手元に置いて、メールや会話で迷ったときにすぐ確認できるようにしておくことをおすすめします。