謙譲語の一覧表|基本動詞の変換と正しい使い方
謙譲語は、自分の動作をへりくだって表現することで、相手を高める敬語です。ビジネスの場面では、自分や自社の行動を述べるときに欠かせません。この記事では、基本動詞の謙譲語変換を一覧表にまとめ、正しい使い方を例文付きで解説します。
謙譲語とは|尊敬語との違い
尊敬語が「相手の動作を高める」のに対し、謙譲語は「自分の動作を低める」ことで結果的に相手を立てる表現です。
例えば「行く」の場合を比較すると次のようになります。
- 尊敬語:「先生がいらっしゃる」(先生の動作を高める)
- 謙譲語:「私が参る」(自分の動作を低める)
謙譲語IとII(丁重語)の違い
文化庁の「敬語の指針」では、謙譲語をさらに2つに分けています。
- 謙譲語I:動作の向かう相手を立てる(例:「先生にお会いする」→先生を立てている)
- 謙譲語II(丁重語):聞き手に対して丁重に述べる(例:「明日参ります」→聞き手に対して丁寧に言っている)
実務では厳密に区別する必要は少ないですが、「参る」「申す」などは謙譲語IIに分類され、動作の相手がいなくても使える点を覚えておくと便利です。
基本動詞の謙譲語変換一覧表
| 普通の表現 | 謙譲語(特別な動詞) | 謙譲語(お〜する) |
|---|---|---|
| 行く | 参る・伺う | - |
| 来る | 参る | - |
| いる | おる | - |
| 言う | 申す・申し上げる | - |
| 食べる | いただく | - |
| 飲む | いただく | - |
| 見る | 拝見する | - |
| 聞く | 伺う・拝聴する | お聞きする |
| 読む | 拝読する | お読みする |
| 書く | - | お書きする |
| 知る | 存じる・存じ上げる | - |
| する | いたす | - |
| もらう | いただく・頂戴する | - |
| あげる | 差し上げる | - |
| 会う | - | お会いする・お目にかかる |
| 待つ | - | お待ちする |
| 送る | - | お送りする |
| 借りる | 拝借する | お借りする |
| 訪ねる | 伺う | お訪ねする |
| 見せる | お目にかける | お見せする |
正しい使い方と例文
「参る」と「伺う」の使い分け
どちらも「行く」の謙譲語ですが、使い分けがあります。
「伺う」:相手のところへ行くとき(謙譲語I・相手を立てる)
- 「明日、御社に伺います」
- 「午後3時にお伺いしてもよろしいでしょうか」
「参る」:行き先に敬意の対象がいないとき、または丁重に述べるとき(謙譲語II)
- 「電車で参りました」
- 「すぐに参ります」
誤った例:
- 「明日、東京タワーに伺います」(東京タワーは敬意の対象ではないので「参ります」が適切)
「申す」と「申し上げる」の使い分け
「申す」:丁重に述べるとき(謙譲語II)
- 「私は田中と申します」
- 「先ほど申しましたように」
「申し上げる」:相手に対して言うとき(謙譲語I・相手を立てる)
- 「お礼を申し上げます」
- 「ひとつお願い申し上げます」
誤った例:
- 「私は田中と申し上げます」(自己紹介の場面では「申す」が適切)
「いただく」の使い方
「食べる」「飲む」「もらう」の謙譲語として幅広く使われます。
正しい例:
- 「お茶をいただきます」(飲むの謙譲語)
- 「ご意見をいただきたく存じます」(もらうの謙譲語)
- 「お時間をいただきありがとうございます」(もらうの謙譲語)
誤った例:
- 「お客様にいただいてください」(「いただく」は自分の動作。相手に使う場合は「召し上がってください」)
「拝見する」「拝読する」「拝借する」の使い方
「拝」が付く謙譲語は、いずれも「ありがたく〜させてもらう」という謙虚な姿勢を表します。
正しい例:
- 「資料を拝見しました」(見るの謙譲語)
- 「メールを拝読いたしました」(読むの謙譲語)
- 「お電話を拝借できますか」(借りるの謙譲語)
誤った例:
- 「部長が資料を拝見した」(「拝見する」は自分の動作に使う謙譲語。部長の動作には「ご覧になった」を使う)
「存じる」と「存じ上げる」の使い分け
「存じる」:事柄について知っているとき
- 「その件は存じております」
- 「場所は存じません」
「存じ上げる」:人について知っているとき
- 「山田部長のことは存じ上げております」
誤った例:
- 「会議室の場所を存じ上げません」(場所は人ではないので「存じません」が適切)
「お〜する」形の使い方
特別な謙譲語動詞がない場合は、「お〜する」の形で謙譲語を作れます。
基本の作り方
- 和語(訓読み):「お」+動詞の連用形+「する」→ お待ちする、お送りする、お届けする
- 漢語(音読み):「ご」+名詞+「する」→ ご連絡する、ご報告する、ご案内する
例文
- 「お荷物をお持ちします」
- 「後ほどご連絡いたします」
- 「会場までご案内します」
「お〜いたす」でさらに丁寧に
「お〜する」の「する」を「いたす」に変えると、さらに丁寧な表現になります。
- 「お待ちいたします」
- 「ご報告いたします」
- 「お届けいたします」
ビジネスメールや接客では「お〜いたします」の形がよく使われます。
よくある謙譲語の間違い
相手の動作に謙譲語を使ってしまう
謙譲語はあくまで自分の動作に使うものです。相手の動作に使うと失礼になります。
- 誤:「お客様が申されたように」→ 正:「お客様がおっしゃったように」
- 誤:「先生が参られました」→ 正:「先生がいらっしゃいました」
- 誤:「部長が拝見しました」→ 正:「部長がご覧になりました」
「いたす」の使いすぎ
何にでも「いたす」を付けると不自然な敬語になることがあります。
- 不自然:「勉強いたしております」→ 自然:「勉強しております」
- 不自然:「感動いたしました」→ 自然:「感動しました」(感情表現に謙譲語は不要な場合が多い)
実践で使いこなすコツ
まず覚えるべき謙譲語10選
日常のビジネスシーンで頻出の謙譲語を優先的に覚えましょう。
- 参る・伺う(行く・来る)
- 申す・申し上げる(言う)
- いただく(もらう・食べる・飲む)
- 拝見する(見る)
- 存じる・存じ上げる(知る)
- いたす(する)
- おる(いる)
- 差し上げる(あげる)
- お目にかかる(会う)
- 拝借する(借りる)
主語で判断する
敬語選びに迷ったら、動作の主語が誰かを確認しましょう。
- 主語が自分・自社 → 謙譲語を使う
- 主語が相手・他社 → 尊敬語を使う
この基本ルールを意識するだけで、謙譲語と尊敬語の取り違えを防げます。
メールで使う定番フレーズ
ビジネスメールでよく使う謙譲語フレーズを定型として覚えておくと便利です。
- 「ご連絡いたします」
- 「確認いたしました」
- 「お送りいたします」
- 「承知いたしました」
- 「拝受いたしました」
まとめ
謙譲語は自分の動作を低めることで相手を立てる敬語です。特別な謙譲語動詞を覚えつつ、「お〜する」「お〜いたす」の形も活用すれば、ビジネスシーンで必要な表現はほぼカバーできます。相手の動作に謙譲語を使ってしまう間違いに注意し、主語を意識する習慣をつけましょう。