ベクトルの基本と内積の計算
ベクトルは高校数学Bで学ぶ分野で、大きさと向きを持つ量を扱います。物理や工学でも広く使われる重要な概念です。ここではベクトルの基本的な性質から内積の計算まで体系的に解説します。
ベクトルとは
ベクトルの定義
ベクトルとは、大きさと向きを持つ量のことです。矢印で表され、始点から終点への向きと矢印の長さ(大きさ)の情報を持ちます。
点Aから点BへのベクトルをベクトルABと表します。ベクトルの大きさ(長さ)は|ベクトルAB|で表します。
ベクトルの相等
2つのベクトルが等しいとは、大きさが等しく、向きが同じであることです。始点の位置は関係ありません。
特殊なベクトル
- 零ベクトル:大きさが0のベクトル。向きは定義されない
- 単位ベクトル:大きさが1のベクトル
- 逆ベクトル:大きさが等しく向きが反対のベクトル
ベクトルの演算
ベクトルの加法
ベクトルaとベクトルbの和は、ベクトルaの終点にベクトルbの始点を合わせて、ベクトルaの始点からベクトルbの終点へのベクトルとして定義されます。
加法の性質は次の通りです。
| 性質 | 内容 |
|---|---|
| 交換法則 | a + b = b + a |
| 結合法則 | (a + b) + c = a + (b + c) |
| 零ベクトル | a + 0 = a |
| 逆ベクトル | a + (-a) = 0 |
ベクトルの減法
ベクトルの引き算は、逆ベクトルの足し算として定義されます。
a - b = a + (-b)
実数倍
ベクトルaの実数k倍は次のように定義されます。
- k > 0 のとき:aと同じ向きで大きさがk倍
- k < 0 のとき:aと逆向きで大きさが|k|倍
- k = 0 のとき:零ベクトル
成分表示
平面ベクトルの成分
平面上のベクトルは2つの成分で表すことができます。
ベクトルa = (a1, a2) のとき、
- 大きさ:|a| = √(a1^2 + a2^2)
- 実数倍:ka = (ka1, ka2)
- 和:a + b = (a1 + b1, a2 + b2)
- 差:a - b = (a1 - b1, a2 - b2)
2点間のベクトル
A(x1, y1)、B(x2, y2)のとき、
ベクトルAB = (x2 - x1, y2 - y1)
例題
A(2, 3)、B(5, 7)のとき、ベクトルABとその大きさを求めます。
ベクトルAB = (5 - 2, 7 - 3) = (3, 4)
|ベクトルAB| = √(9 + 16) = √25 = 5
内積
内積の定義
2つのベクトルaとbの内積(スカラー積)は次のように定義されます。
a・b = |a||b| cos θ
ここでθはaとbのなす角(0度 <= θ <= 180度)です。
内積の結果はベクトルではなく、実数(スカラー)になることに注意してください。
成分による内積の計算
a = (a1, a2)、b = (b1, b2)のとき、
a・b = a1b1 + a2b2
対応する成分の積の和で計算できます。
内積の性質
| 性質 | 式 |
|---|---|
| 交換法則 | a・b = b・a |
| 分配法則 | a・(b + c) = a・b + a・c |
| 実数倍 | (ka)・b = k(a・b) |
| 自分自身 | a・a = |
なす角の計算
内積を使って2つのベクトルのなす角を求めることができます。
cos θ = a・b / (|a||b|)
例題:a = (1, √3)、b = (2, 0)のなす角を求めます。
- a・b = 1 x 2 + √3 x 0 = 2
- |a| = √(1 + 3) = 2
- |b| = 2
- cos θ = 2 / (2 x 2) = 1/2
- θ = 60度
垂直条件
2つのベクトルが垂直であるための条件は、
a・b = 0(ただしa ≠ 0、b ≠ 0)
cos 90度 = 0 であることから導かれます。
位置ベクトル
定義
原点Oからの点PへのベクトルOPを、点Pの位置ベクトルと呼びます。
内分点・外分点の位置ベクトル
線分ABをm:nに内分する点Pの位置ベクトルは、
OP = (nOA + mOB) / (m + n)
線分ABをm:nに外分する点Qの位置ベクトルは、
OQ = (-nOA + mOB) / (m - n)
重心の位置ベクトル
三角形ABCの重心Gの位置ベクトルは、
OG = (OA + OB + OC) / 3
ベクトル方程式
直線のベクトル方程式
点Aを通り、方向ベクトルdに平行な直線上の点Pは、
OP = OA + td(tは実数)
と表されます。
応用例
ベクトルを使って、直線の交点、三角形の面積比、共線条件(3点が一直線上にある条件)などを求めることができます。
まとめ
ベクトルの学習ポイントを整理します。
- ベクトルは大きさと向きを持つ量である
- 成分表示を使うと計算が具体的にできる
- 内積は角度の情報を含み、垂直判定にも使える
- 位置ベクトルで内分点・外分点・重心を求められる
- ベクトル方程式で直線を表すことができる
ベクトルは幾何的な直感と代数的な計算を橋渡しする道具です。両面から理解を深めましょう。