意味を勘違いしやすいことわざ|正しい意味を解説
ことわざは昔から口伝えで受け継がれてきた知恵の結晶ですが、長い年月を経る中で本来の意味とは異なる解釈が広まってしまったものがいくつもあります。ここでは、特に勘違いされやすいことわざを取り上げ、正しい意味と由来を解説します。
意味が逆に理解されやすいことわざ
「情けは人のためならず」
誤った解釈: 人に情けをかけると、その人のためにならない。甘やかしてはいけない。
正しい意味: 人に情けをかけるのは、その人のためだけではなく、巡り巡って自分自身に良い報いとして返ってくるものだ、ということ。
文化庁の「国語に関する世論調査」では、本来の意味を正しく理解している人は45%程度にとどまり、誤った意味で使っている人と拮抗する結果が出ています。「ならず」を「ためにならない」と読んでしまうことが誤解の原因です。
「犬も歩けば棒に当たる」
誤った解釈: 余計なことをすると災難に遭うという戒め(のみ)。
正しい意味: このことわざには二つの解釈があります。一つは「出歩くと思わぬ災難に遭う」という消極的な意味、もう一つは「何でもやってみると思いがけない幸運に出会える」という積極的な意味です。現在では後者の意味で使われることが多くなっています。
「かわいい子には旅をさせよ」
誤った解釈: かわいい子どもには旅行をさせて楽しませてあげるのがよい。
正しい意味: 我が子がかわいいならば、甘やかさずに世の中の厳しさを経験させたほうがよい、という教訓です。昔の旅は現代のような快適なものではなく、苦しく困難なものでした。その苦労を経験させることで人間として成長するという意味が込められています。
一部分だけ知られていることわざ
「井の中の蛙大海を知らず」
多くの人が知っている部分はここまでですが、実はこの後に「されど空の深さ(青さ)を知る」という続きがあるとされています。狭い世界にいるからこそ、深い専門知識を持っているという意味が加わります。
ただし、この続きの部分は日本で後から付け加えられたものとする説が有力で、原典である中国の『荘子』には記載がありません。
「三つ子の魂百まで」
誤った解釈: 三つ子(三人の子ども)の性質は百歳まで変わらない、または3歳までに教育すれば生涯身につく。
正しい意味: 「三つ子」は三歳の幼児のこと(多胎児ではない)。幼い頃に形成された性格や気質は、年を取っても変わらないという意味です。教育のことではなく、生まれ持った性質について述べたことわざです。
「血は水よりも濃い」
誤った解釈: 単に血縁関係は他の関係より強いという意味のみ。
本来の背景: 英語の “Blood is thicker than water” が元になっているとする説では、原型は “The blood of the covenant is thicker than the water of the womb”(契約で結ばれた血の絆は胎内の水の絆より濃い)であり、本来は血縁よりも共に戦った仲間との絆のほうが強いという逆の意味だったとされます。ただし、この説には異論もあり定説ではありません。
使う場面を間違えやすいことわざ
「馬子にも衣装」
誤った使い方: 褒め言葉として「馬子にも衣装ですね」と使うこと。
正しい理解: 「どんな人でも外見を整えれば立派に見える」という意味ですが、裏を返せば「普段はそれほどでもない人が着飾ると見栄えがする」というニュアンスがあります。相手に直接使うと失礼にあたるため、目上の人に対しては使わないのが無難です。
「流れに棹さす」
よくある誤解: 流れに逆らう、時流に逆行する。
正しい意味: 流れに乗って棹を差し、勢いをつけること。つまり、時流に乗じて物事をうまく進めるという意味です。「棹さす」は船を進めるための動作であり、止める動作ではありません。
| 誤用例 | 正しい使い方 |
|---|---|
| 時代の流れに棹さす発言 | 景気回復の流れに棹さして事業を拡大する |
「小春日和」
よくある誤解: 春先の暖かい日のこと。
正しい意味: 晩秋から初冬にかけての暖かく穏やかな天気のことです。「小春」は旧暦10月(現在の11月頃)の異称であり、春のことではありません。英語でも “Indian summer” と呼ばれ、秋に訪れる暖かい日を指します。
「白羽の矢が立つ」
よくある誤解: 多くの中から良い人材として選ばれること。名誉なこと。
本来の意味: 元々は人身御供(いけにえ)として選ばれることを意味する不吉な表現でした。神が生贄にする娘の家の屋根に白羽の矢を立てたという伝説に由来します。現在では「多くの中から特に選び出される」という意味で、良い意味にも悪い意味にも使われています。
ことわざの正しい理解のために
ことわざの多くは古い時代の生活や文化を背景に生まれています。現代の感覚だけで解釈すると、本来の意味を見誤ることがあります。
語源や由来を調べると、ことわざに込められた先人の知恵をより深く理解することができます。日常会話ではある程度の意味の変化は許容されますが、文章を書く場面や試験の場面では、本来の正しい意味を押さえておくことが重要です。