卒論の要旨・アブストラクトの書き方
要旨(アブストラクト)は、卒業論文の内容を短くまとめた文章です。論文の全体像を伝える「顔」ともいえる部分であり、審査員や読者が論文を読むかどうかを判断する際の重要な手がかりとなります。ここでは、要旨の書き方をテンプレートや構成例とともに解説します。
要旨とは
要旨の定義と目的
要旨は、論文の目的、方法、結果、結論を簡潔にまとめた文章です。通常、論文の冒頭(表紙の次のページ)に配置されます。要旨を読むだけで、論文全体の内容が概略的に理解できるように書くことが求められます。
要旨の主な目的は以下のとおりです。
- 論文の内容を短時間で把握できるようにする
- 読者が論文を読む必要があるかを判断する材料となる
- データベースや論文検索の際の情報源となる
- 学会発表の審査資料として使われる
要旨と序論の違い
要旨と序論は混同されがちですが、役割が異なります。
| 区分 | 要旨 | 序論 |
|---|---|---|
| 位置 | 論文の冒頭(独立したページ) | 本文の最初の章 |
| 内容 | 論文全体の要約(結論含む) | 背景と問いの提示 |
| 結論 | 含む | 含まない |
| 分量 | 200〜800字程度 | 本文の10〜15% |
| 読者の期待 | 全体像の把握 | 問題意識の共有 |
要旨に含めるべき要素
要旨には以下の5つの要素を含めます。
要素1:背景と目的
研究の背景を1〜2文で簡潔に述べた後、研究の目的を明示します。序論で書くような詳しい背景説明は不要です。
要素2:方法
どのような方法で研究を行ったかを簡潔に記述します。調査対象、データの種類、分析手法などを含めます。
要素3:結果
研究で得られた主要な結果を具体的に記述します。数値データがある場合は、主要な数値を含めると説得力が増します。
要素4:結論
結果から導かれる結論を述べます。リサーチクエスチョンに対する答えを明確に示します。
要素5:意義(任意)
字数に余裕がある場合は、研究の学術的・社会的意義を1文程度で付け加えます。
文字数別の構成例
200字の場合
200字程度の要旨では、各要素を1文ずつに凝縮します。
- 背景と目的:1〜2文
- 方法:1文
- 結果:1〜2文
- 結論:1文
400字の場合
400字であれば、各要素をもう少し詳しく記述できます。
- 背景と目的:2〜3文
- 方法:1〜2文
- 結果:2〜3文
- 結論:1〜2文
800字の場合
800字の要旨では、結果や考察の内容をより具体的に記述できます。意義や今後の課題にも言及する余裕があります。
要旨のテンプレート
以下に、要旨の基本的なテンプレートを示します。
「本研究は、[背景の説明]を踏まえ、[研究の目的]を目的とする。研究方法として、[方法の概要]を用いた。その結果、[主要な結果]が明らかになった。以上の結果から、[結論]と結論づけられる。本研究の成果は、[意義や貢献]に寄与するものである。」
テンプレートを使った具体例
「近年、大学生のメンタルヘルスの悪化が社会的な問題となっている。本研究は、大学生の運動習慣とメンタルヘルスの関連を明らかにすることを目的とする。A大学の学生300名を対象に、運動頻度とGHQ-28(精神健康調査票)を用いた質問紙調査を実施した。その結果、週3回以上運動する学生は、運動習慣のない学生と比較してGHQ-28の得点が有意に低く、精神的健康度が高いことが示された。以上の結果から、定期的な運動習慣が大学生の精神的健康の維持に寄与する可能性が示唆される。」
要旨を書く際の注意点
書くタイミング
要旨は論文の最後に書きます。論文全体の内容が確定してから要旨を作成することで、本文と要旨の間に食い違いが生じるのを防げます。
文体と表現
要旨の文体に関する注意点は以下のとおりです。
- 「だ・である」調で統一する
- 略語は初出時に正式名称を記す
- 図表への言及は避ける(要旨は独立した文章であるため)
- 引用文献への言及も原則として避ける
- 具体的かつ簡潔な表現を心がける
よくある失敗
要旨でよく見られる問題を挙げておきます。
- 結論を書かず、背景と目的だけで終わっている
- 本文にない内容を要旨に書いている
- 抽象的すぎて何を研究したのかわからない
- 指定された字数を大幅に超過している
- 要旨と序論がほぼ同じ内容になっている
- 感想や主観的な評価が含まれている
要旨は短い文章ですが、論文全体の内容を凝縮するため、書くのに意外と時間がかかります。何度も推敲を重ねて、簡潔で正確な要旨を完成させましょう。