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孫悟空とは?中国神話・西遊記の英雄を解説

中国神話 孫悟空 西遊記 三蔵法師 斉天大聖
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中国の古典文学において最も人気のある英雄が、『西遊記』の主人公・孫悟空です。石から生まれた猿の王は、仙術を極め、天界に反乱を起こし、やがて三蔵法師とともに天竺を目指す壮大な旅に出ます。ここでは、孫悟空の誕生から能力、天界での大暴れ、そして西方への旅までを詳しく解説します。

孫悟空の誕生

孫悟空の誕生は、普通の猿とは全く異なる神秘的なものでした。

花果山の仙石から生まれた猿

東勝神洲の海上にそびえる花果山(かかざん)の頂上に、天地開闢の時から存在する仙石がありました。この石は長い年月をかけて天地の精気、日月の光を浴び続け、ある日突然割れて一匹の石猿が飛び出しました。この石猿こそが、後の孫悟空です。

生まれた石猿は目から金色の光を放ち、その光は天界にまで届いたとされています。玉皇大帝(天界の最高神)もこの光に気づきましたが、地上の猿の誕生と知って特に気に留めなかったと言われています。

花果山の猿王

石猿は花果山の猿たちと暮らし始めました。ある日、猿たちが滝の奥にある洞窟を見つけようと挑戦した際、石猿が勇敢に滝をくぐり抜けて「水簾洞(すいれんどう)」を発見しました。この功績により、猿たちは石猿を王と認め、「美猴王(びこうおう)」の称号を与えました。

菩提祖師のもとでの修行

不老不死を求めた美猴王は、10年以上かけて海を渡り、霊台方寸山の斜月三星洞に住む仙人・菩提祖師(ぼだいそし)のもとを訪れました。菩提祖師は彼に「孫悟空」という名を与え、さまざまな仙術を授けました。

修得した術内容
七十二変化72種類の変身術。あらゆる生物や物に変身できる
觔斗雲(きんとうん)一度の宙返りで十万八千里(約5万4千km)を飛ぶ
身外身の術体毛を吹いて分身を作り出す
大きさの変化身体を巨大にも極小にも変えられる

修行を終えた孫悟空は花果山に戻り、猿の王として再び君臨しました。

天界での大暴れ

孫悟空の物語で最も痛快なエピソードが、天界での反乱です。

如意金箍棒の入手

孫悟空は武器を求めて東海龍王の宮殿を訪れました。そこで手に入れたのが如意金箍棒(にょいきんこぼう)です。この棒は本来、大禹(古代中国の伝説的な帝王)が洪水を治めた際に海の深さを測るために使った道具でした。

如意金箍棒の特徴詳細
重さ一万三千五百斤(約8トン)
大きさ自在に伸縮可能
収納小さくして耳の中に隠せる
材質神鉄で作られている

孫悟空はさらに龍王たちから黄金の鎖帷子、鳳翅紫金冠、藕糸歩雲履を奪い取りました。

冥界での名前の抹消

孫悟空は冥界(地獄)にまで乗り込み、閻魔大王の管理する「生死簿」から自分と猿たちの名前を墨で塗りつぶしてしまいました。これにより、孫悟空は死の運命から逃れたのです。

弼馬温と斉天大聖

天界の秩序を乱す孫悟空を制御するため、玉皇大帝は孫悟空を天界に招き、「弼馬温(ひつばおん)」という役職を与えました。しかしこれは天界の馬の世話をするだけの下級職でした。この侮辱に怒った孫悟空は天界を飛び出し、自ら「斉天大聖(せいてんたいせい)」すなわち「天に等しく偉大な聖者」と名乗りました。

天界は再び孫悟空を招き入れ、今度は蟠桃園(ばんとうえん)の管理を任せました。しかし孫悟空は、不老不死の力を持つ蟠桃を食べ尽くし、さらに太上老君の金丹(仙薬)まで飲み干してしまいました。

十万の天兵との戦い

蟠桃園の事件を知った玉皇大帝は激怒し、十万の天兵を花果山に差し向けました。しかし孫悟空は七十二変化と如意金箍棒を駆使して天兵を次々と打ち破りました。四天王や哪吒(なた)太子といった名だたる武神たちも孫悟空を止めることができませんでした。

二郎真君(楊セン)との変化合戦では互角に渡り合い、最終的に太上老君の金剛琢(こんごうたく)で捕らえられました。しかし太上老君の八卦炉で49日間焼かれても死なず、むしろ煙で目が赤くなった「火眼金睛(かがんきんせい)」という真実を見通す目を得てしまいました。

釈迦如来による封印

手に負えなくなった孫悟空を封じたのは、釈迦如来(お釈迦様)でした。

五行山の下への封印

釈迦如来は孫悟空に賭けを持ちかけました。「私の手のひらから飛び出すことができたら、天界の主を譲ろう」というものです。孫悟空は觔斗雲に乗って世界の果てまで飛び、そこにあった5本の柱に自分の名前を書きました。

しかし戻ってみると、その5本の柱は釈迦如来の指であり、孫悟空は一度も手のひらの外に出ていなかったのです。釈迦如来は手のひらを返して五行山(ごぎょうざん)に変え、孫悟空をその下に500年間封印しました。

500年の幽閉

五行山の下で動くことも飛ぶこともできなくなった孫悟空は、500年もの間閉じ込められ続けました。鉄の丸薬と溶けた銅を食事として与えられるという厳しい生活でした。この500年の幽閉は、傲慢であった孫悟空が謙虚さを学ぶための試練であったと解釈されています。

三蔵法師との旅

500年後、観音菩薩の導きにより、孫悟空は三蔵法師(玄奘三蔵)の弟子となる機会を得ます。

三蔵法師との出会い

唐の僧侶・三蔵法師が天竺(インド)へ経典を取りに行く旅の途中、五行山を通りかかりました。孫悟空は三蔵法師の手によって封印を解かれ、その護衛として旅に同行することになりました。

ただし観音菩薩は孫悟空の暴走を防ぐため、頭に「緊箍児(きんこじ)」と呼ばれる金の輪をはめさせました。三蔵法師が「緊箍呪(きんこじゅ)」を唱えると、この輪が頭を締めつけ、孫悟空は激しい頭痛に苦しむ仕組みでした。

旅の仲間たち

三蔵法師と孫悟空の旅には、他にも仲間が加わりました。

名前正体役割
猪八戒(ちょはっかい)天界を追放された天蓬元帥食いしん坊で怠け者だが戦闘力は高い
沙悟浄(さごじょう)天界を追放された捲簾大将真面目で忠実な荷物持ち
玉龍(白馬)西海龍王の三太子三蔵法師の乗り物として馬に変身

九九八十一の難

天竺への旅路では、八十一の難が一行を待ち受けていました。妖怪や魔物との戦い、自然の脅威、人間の悪意など、さまざまな困難を乗り越えなければなりませんでした。牛魔王の妻・鉄扇公主との芭蕉扇をめぐる戦いや、金角銀角大王との知恵比べなど、名場面は数え切れません。

孫悟空はその圧倒的な戦闘力と知恵で多くの難を切り抜けましたが、中には観音菩薩や釈迦如来の助けを借りなければ解決できない難もありました。

孫悟空の悟りと成仏

すべての難を乗り越え、天竺にたどり着いた一行は、釈迦如来から経典を授かりました。旅を通じて孫悟空は傲慢さを捨て、慈悲の心を学びました。功績を認められた孫悟空は「闘戦勝仏(とうせんしょうぶつ)」という仏の位を授けられました。かつて天界を大いに乱した暴れ猿が、仏として悟りを開いたのです。

頭の緊箍児は悟りの達成とともに自然に消え、孫悟空はすべての束縛から解放されました。

まとめ

孫悟空は、石から生まれ仙術を極めた猿の王であり、天界に反乱を起こすほどの破天荒な存在です。しかしその傲慢さゆえに釈迦如来に封印され、500年の幽閉を経て三蔵法師の弟子となりました。天竺への長い旅路を通じて忍耐と慈悲を学び、最終的に仏の位を得るという物語は、成長と悟りの壮大な寓話として読むことができます。

痛快な戦闘、ユーモラスな仲間たちとの掛け合い、そして深い精神的成長という多層的な魅力を持つ孫悟空の物語は、『西遊記』の成立から数百年を経た現在でも、東アジアを中心に世界中で愛され続けています。日本でも漫画やアニメの題材として広く親しまれており、その影響力は計り知れません。

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