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天守の種類と構造を解説|望楼型から層塔型まで

天守 城の知識 建築 現存天守
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城めぐりをしていると、天守の形や構造が城によって異なることに気づきます。天守は城のシンボルであると同時に、築城された時代や地域、城主の意図によってさまざまな種類に分けられます。この記事では、天守の基本的な分類と構造、そして現存天守の特徴をわかりやすく解説します。天守の知識を持っていれば、城めぐりがより一層楽しくなるはずです。

天守とは何か

天守(てんしゅ)は、城郭の中心部に築かれた最も高い建造物です。城の象徴であるとともに、物見や指揮の場として機能しました。「天守閣」という呼び方は明治以降に一般化したもので、歴史的には「天守」が正式な呼称です。

天守が登場したのは戦国時代後期のことです。一般に、織田信長が1576年に築いた安土城の天主が、本格的な天守の嚆矢とされています。安土城の天主は地上6階地下1階の壮大な建造物で、外壁は金箔や漆で豪華に装飾されていたと伝えられています。

天守の役割は時代とともに変化しました。戦国時代には軍事的な機能が重視されましたが、江戸時代に入ると実戦で使われることはほぼなくなり、藩主の権威を示すシンボルとしての意味合いが強くなりました。そのため、江戸時代の天守は外観の美しさや装飾性を重視する傾向が見られます。

天守の「階」と「重」は異なる概念です。「重」は外観から数えた屋根の数、「階」は内部の床の数を指します。たとえば松本城は「五重六階」で、外から見ると5層の屋根がありますが、内部は6つの階に分かれています。外観からは見えない「隠し階」がある場合に、重と階の数が一致しなくなります。

構造による分類:望楼型と層塔型

天守は構造によって大きく「望楼型」と「層塔型」に分類されます。

望楼型天守は、大きな入母屋造りの建物の上に小さな望楼(物見台)を載せた形式です。初期の天守に多く見られ、不規則な平面を持つのが特徴です。各階の大きさの逓減率が一定ではなく、下層と上層の関係が有機的で、やや不整形な印象を与えます。

望楼型の代表例としては、姫路城、犬山城、松本城、高知城などが挙げられます。犬山城は現存天守のなかでも最古級とされ、望楼型の特徴をよく残しています。姫路城の大天守も望楼型で、複雑な屋根の重なりが優美な外観を生み出しています。

層塔型天守は、各階が規則的に逓減していく形式で、五重塔のように整然とした外観が特徴です。望楼型より後の時代に発達し、設計・施工が合理化された結果生まれた形式とされています。各階の平面がほぼ同じ形で、上に行くにつれて均等に小さくなるため、すっきりとした印象を与えます。

層塔型の代表例としては、名古屋城、津山城(現存せず)、宇和島城、丸亀城などがあります。名古屋城の天守は層塔型の傑作とされ、整然とした外観に金鯱が映える壮麗な姿で知られていました。

付属建物による分類

天守はまた、付属する建物との関係によっても分類されます。

独立式天守は、天守が単独で建つ形式です。他の建物と渡櫓などで接続されておらず、天守のみが独立して存在します。丸亀城、宇和島城、犬山城などが独立式です。構造がシンプルで、天守の姿がはっきりと際立つ特徴があります。

複合式天守は、天守に付櫓(つけやぐら)が直接接続された形式です。天守と付櫓が一体となっており、彦根城や松江城がこの形式に分類されます。付櫓は天守への入口を防御する役割を担い、敵が直接天守に取り付くことを困難にしています。

連結式天守は、大天守と小天守が渡櫓で連結された形式です。松本城は大天守と乾小天守が渡櫓で結ばれた連結式天守の代表例です。複数の建物が連なることで、より複雑な防御が可能になります。

連立式天守は、大天守と複数の小天守・櫓が渡櫓で囲むように結ばれ、中庭を形成する形式です。最も防御力の高い形式とされ、姫路城と松山城がこの連立式に分類されます。敵が一つの建物を突破しても、中庭を囲む他の建物から攻撃を受けるため、きわめて堅固な構造です。

現存天守12城

江戸時代以前に建てられ、現在まで残っている天守は全国に12あります。これらは「現存12天守」と呼ばれ、城郭建築の貴重な文化遺産です。

国宝に指定されている5城は、姫路城(兵庫県)、松本城(長野県)、犬山城(愛知県)、彦根城(滋賀県)、松江城(島根県)です。いずれも建築的・歴史的価値がきわめて高く、城めぐりファンなら必ず訪れたい名城です。

重要文化財に指定されている7城は、弘前城(青森県)、丸岡城(福井県)、備中松山城(岡山県)、丸亀城(香川県)、松山城(愛媛県)、宇和島城(愛媛県)、高知城(高知県)です。

現存天守はいずれも修復を重ねながら大切に保存されてきたものです。城を訪れる際には、何百年もの歴史を経てなお健在な建造物であることに思いを馳せ、文化遺産としての価値を感じていただければと思います。

復元天守と模擬天守

現存天守以外にも、全国各地で天守を目にすることができますが、それらは「復元天守」「復興天守」「模擬天守」に分類されます。

復元天守は、史料に基づいて忠実に元の姿を再現したものです。木造復元の白河小峰城三重櫓や、外観復元の名古屋城天守閣(鉄筋コンクリート造)などがあります。近年は木造での復元を目指す動きが各地で進んでいます。

復興天守は、天守があったことは確かですが、正確な史料が不足しているため、推定に基づいて再建したものです。大阪城天守閣や小田原城天守閣がこれにあたります。

模擬天守は、もともと天守がなかった場所や、天守の記録がない城に観光目的で建てられたものです。歴史的な正確さよりも、観光資源としての役割を担っています。

これらの違いを知っておくと、城を訪れた際に「この天守はいつの時代のどのような経緯で建てられたのか」という視点が加わり、城への理解がより深まるでしょう。

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