国保と社保の違い|国民健康保険と社会保険を比較
日本では国民全員がいずれかの公的医療保険に加入する「国民皆保険制度」が採用されています。主な選択肢として国民健康保険(国保)と社会保険(社保)がありますが、加入条件や保険料の計算方法、給付内容には違いがあります。ここでは両者を詳しく比較します。
加入対象の違い
社会保険(健康保険)の加入対象
社会保険の健康保険は、主に会社員や公務員などが加入する医療保険です。法人事業所に勤務する従業員や、常時5人以上を雇用する個人事業所の従業員が対象となります。
パート・アルバイトであっても、一定の条件(週の所定労働時間が正社員の4分の3以上、または従業員101人以上の企業で週20時間以上勤務など)を満たす場合は社会保険に加入します。
国民健康保険の加入対象
国民健康保険は、社会保険に加入していない人が加入する医療保険です。自営業者、フリーランス、農業・漁業従事者、無職の人、退職して社会保険から脱退した人などが対象です。
75歳以上は後期高齢者医療制度に移行するため、国保の対象からは外れます。
| 保険の種類 | 主な加入対象 |
|---|---|
| 健康保険(協会けんぽ) | 中小企業の会社員 |
| 健康保険(組合健保) | 大企業の会社員 |
| 共済組合 | 公務員、教員 |
| 国民健康保険 | 自営業、フリーランスなど |
保険料の違い
社会保険の保険料
社会保険の健康保険料は、標準報酬月額(おおよその月給)に保険料率を掛けて計算されます。重要な点は、保険料の半額を会社が負担する「労使折半」の仕組みがあることです。
つまり、給与明細に記載されている健康保険料は実際の保険料の半分であり、残り半分は会社が支払っています。
保険料率は加入する健康保険の種類によって異なり、協会けんぽの場合は都道府県ごとに設定されています(2025年度で約9.3〜10.7%)。
国民健康保険の保険料
国民健康保険の保険料は市区町村ごとに異なる計算方法が用いられています。一般的には前年の所得に応じた「所得割」、加入者1人あたりの「均等割」、1世帯あたりの「平等割」などを組み合わせて計算されます。
国保には事業主負担がないため、保険料の全額を自分で支払う必要があります。このため、同じ収入であれば社会保険よりも負担が大きくなることが一般的です。
保険料の比較
| 項目 | 社会保険 | 国民健康保険 |
|---|---|---|
| 計算基準 | 標準報酬月額 | 前年所得など |
| 事業主負担 | あり(半額) | なし |
| 扶養家族の保険料 | かからない | 人数分かかる |
| 保険料の上限 | あり | あり(年間上限額) |
扶養制度の違い
社会保険の扶養制度
社会保険には「被扶養者」の制度があり、年収130万円未満(60歳以上または障害者は180万円未満)の配偶者や親族は、追加の保険料なしで被扶養者として健康保険に加入できます。
この扶養制度は社会保険の大きなメリットの一つです。配偶者や子どもが何人いても、保険料は変わりません。
国民健康保険の扶養制度
国民健康保険には扶養の概念がありません。世帯の加入者一人ひとりに保険料がかかります。したがって、家族の人数が多いほど保険料の合計額は増えます。
この違いは、特に配偶者や子どもがいる世帯にとって大きな負担の差となります。
給付内容の違い
共通する給付
医療機関での窓口負担割合は、社会保険も国保も同じです。現役世代は3割負担、小学校入学前の子どもは2割負担、70歳以上は所得に応じて1〜3割負担となっています。
高額療養費制度も両方に適用され、月ごとの医療費の自己負担額が一定額を超えた場合に、超過分が払い戻されます。
社会保険にのみある給付
社会保険には国保にはない給付があります。
傷病手当金は、病気やけがで働けなくなった場合に、最長1年6ヶ月間、標準報酬日額の3分の2が支給される制度です。国民健康保険には原則としてこの制度がありません。
出産手当金は、出産のために仕事を休んだ期間に支給されるもので、産前42日間・産後56日間が対象です。こちらも国保にはない給付です。
| 給付内容 | 社会保険 | 国民健康保険 |
|---|---|---|
| 医療費の窓口負担 | 3割 | 3割 |
| 高額療養費 | あり | あり |
| 出産育児一時金 | あり | あり |
| 傷病手当金 | あり | 原則なし |
| 出産手当金 | あり | なし |
手続きの違い
社会保険の手続き
社会保険の加入・脱退の手続きは原則として会社が行います。入社時に会社が手続きを行い、保険証が交付されます。退職時にも会社が脱退手続きを行い、保険証を返却します。
国民健康保険の手続き
国民健康保険の加入手続きは自分で市区町村の窓口に届け出る必要があります。社会保険を脱退した日から14日以内に届け出ることが求められています。届け出が遅れると、遡って保険料が請求されることがあります。
退職後の選択肢
会社を退職して社会保険の資格を喪失した場合、主に3つの選択肢があります。
国民健康保険に加入する方法、社会保険の任意継続被保険者になる方法(退職後最長2年間、退職前の健康保険を継続できる制度)、家族の社会保険の被扶養者になる方法です。
任意継続の場合、保険料は全額自己負担(事業主負担分もあわせて支払う)となりますが、国保より安くなるケースもあるため、両方の保険料を比較して選択することが推奨されます。
まとめ
国民健康保険と社会保険の最大の違いは、加入対象者と保険料の負担構造にあります。社会保険は会社が保険料の半額を負担し、扶養制度もあるため、家族がいる場合は保険料面で有利になることが多いです。また、傷病手当金や出産手当金など社会保険にのみある給付もあります。退職や転職の際は、保険の切り替え手続きを速やかに行うことが大切です。