「なります」の誤用|バイト敬語に注意
「こちらがメニューになります」「お会計は1000円になります」――飲食店やコンビニでよく耳にするこれらの表現、実は正しい敬語ではありません。「なります」は「変化」を表す言葉であり、何かが別の何かに変わる場合に使うのが本来の用法です。この記事では、「なります」の誤用パターンと正しい言い換え表現を解説します。
「なります」の本来の意味
「なる」は変化を表す動詞
「なる」の本来の意味は、あるものが別の状態に変わることです。
- 「春になりました」(季節が変わった)
- 「お子様が大きくなりましたね」(成長した)
- 「修理が完了になりました」(状態が変わった)
これらはすべて「変化」を表しており、正しい用法です。
丁寧語としての「なります」
「〜になります」を丁寧語として使う場合も、変化のニュアンスが必要です。
- 正しい:「会議室は3階になります」(変化ではないが、案内表現として慣用化)
- 正しい:「合計で5000円になります」(計算結果として変化した)
よくある「なります」の誤用
誤用パターン1:存在を伝える場面
変化していないのに「なります」を使う間違いです。
- 誤:「こちらがメニューになります」
- 正:「こちらがメニューでございます」
メニューは最初からメニューであり、何かがメニューに「変化」したわけではありません。
誤用パターン2:状態を説明する場面
-
誤:「こちらが本日のおすすめになります」
-
正:「こちらが本日のおすすめでございます」
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誤:「お手洗いはあちらになります」
-
正:「お手洗いはあちらでございます」
誤用パターン3:料理や商品を提供する場面
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誤:「ご注文のコーヒーになります」
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正:「ご注文のコーヒーでございます」
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誤:「こちらがAセットになります」
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正:「こちらがAセットでございます」
誤用パターン4:金額を伝える場面
- 誤:「お会計は3500円になります」
- 正:「お会計は3500円でございます」
ただし、「合計が○○円になります」は計算結果として変化を伝えているため、許容される場面もあります。
なぜ「なります」が広まったのか
バイト敬語・コンビニ敬語の影響
「なります」の誤用は、いわゆる「バイト敬語」「コンビニ敬語」として広まったものです。マニュアルで覚えた表現がそのまま定着し、正しい敬語だと思い込んでいる人が多くいます。
「です」よりも丁寧に聞こえる錯覚
「こちらがメニューです」よりも「こちらがメニューになります」のほうが丁寧に聞こえるという感覚から、使われるようになったと考えられます。しかし、正確には「でございます」が正しい丁寧表現です。
断定を和らげたいという心理
「〜です」と断定するのは少し硬い印象があるため、「なります」を使うことで柔らかくしたいという心理もあるでしょう。しかし、「でございます」を使えば、丁寧かつ正確に伝えられます。
正しい言い換え表現
「でございます」への言い換え
| 誤用 | 正しい表現 |
|---|---|
| こちらがメニューになります | こちらがメニューでございます |
| お手洗いはあちらになります | お手洗いはあちらでございます |
| 担当の○○になります | 担当の○○でございます |
| お釣りは500円になります | お釣りは500円でございます |
| 本日の日替わりになります | 本日の日替わりでございます |
「です」で十分な場面
カジュアルな場面では「でございます」ではなく「です」で問題ありません。
- 「こちらがメニューです」
- 「お手洗いはあちらです」
- 「お会計は1000円です」
「なります」が正しい場面
変化を伝える場面では「なります」を使って問題ありません。
- 「お待ち時間は約30分になります」(待ち時間という結果になる)
- 「来月から新価格になります」(価格が変わる)
- 「本日をもちまして閉店となります」(状態が変わる)
- 「このまま進みますと、納期に遅れが生じることになります」(結果として変わる)
ビジネスシーンでの「なります」
オフィスでの誤用例
「なります」の誤用はオフィスでも見られます。
- 誤:「私が担当になります」(すでに担当に決まっている場合)
- 正:「私が担当でございます」
- 正:「私が担当を務めさせていただきます」
ただし、「これから担当になる」という変化を伝える場合は正しい用法です。
- 正:「来月から私が担当になります」(担当が変わるという変化)
メールでの注意点
メールでも無意識に「なります」を使いがちです。
-
誤:「添付ファイルが報告書になります」
-
正:「添付ファイルが報告書でございます」
-
誤:「ご不明な点があれば、窓口は弊社○○になります」
-
正:「ご不明な点があれば、弊社○○が窓口でございます」
電話対応での注意点
- 誤:「お客様のご注文番号は○○になります」
- 正:「お客様のご注文番号は○○でございます」
他のバイト敬語にも注意
「よろしかったでしょうか」
- 誤:「ご注文は以上でよろしかったでしょうか」(過去形が不自然)
- 正:「ご注文は以上でよろしいでしょうか」
「〜のほう」
- 誤:「お会計のほうは○○円になります」(「のほう」が不要)
- 正:「お会計は○○円でございます」
「〜から」
- 誤:「1000円からお預かりします」(「から」が不要)
- 正:「1000円お預かりいたします」
正しい日本語を意識する重要性
ビジネスでの第一印象
言葉遣いはビジネスにおける第一印象を大きく左右します。バイト敬語を無意識に使っていると、「社会人としての教養が足りない」と思われるリスクがあります。特に取引先やお客様に対しては、正確な敬語を使うことが信頼獲得の第一歩です。
周囲のフィードバックを活用する
自分では気づかない言葉の癖は、周囲の人に指摘してもらうのが効果的です。信頼できる上司や先輩に「私の言葉遣いで気になるところはありますか」と聞いてみると、改善のきっかけになります。
まとめ
「なります」は本来「変化」を表す言葉です。変化していない事柄に「なります」を使うのはバイト敬語の典型的な誤用です。「でございます」に言い換えることで、正しく丁寧な表現になります。日常的に使ってしまいがちな表現だからこそ、正しい使い方を意識して身に付けましょう。