北海道の城・チャシ跡ガイド|松前城から根室半島まで
北海道の城郭は、本州以南の城とは大きく異なる歴史と特徴を持っています。和人が築いた松前城や五稜郭と、アイヌの人々が築いたチャシ跡が共存する北海道は、日本の城郭文化の多様性を体感できる地域です。この記事では、北海道の主要な城郭遺跡を紹介し、その歴史と見どころ、アクセス情報を解説します。
北海道の城の特徴
北海道の城郭は、本州の城とは成り立ちが異なります。
和人の城郭
北海道における和人の城郭の歴史は比較的新しく、中世の館(たて)と呼ばれる防御施設に始まります。渡島半島南部を中心に、松前藩の拠点として城郭が築かれました。近世の城としては松前城が北海道唯一の日本式城郭であり、幕末には西洋式の五稜郭が函館に築かれました。
アイヌのチャシ
チャシは、アイヌの人々が築いた防御施設や祭祀の場です。「チャシ」はアイヌ語で「柵」を意味すると言われています。チャシは主に丘陵や岬の先端に築かれ、壕と土塁で区画された構造を持っています。北海道各地に500か所以上のチャシ跡が確認されており、日本の城郭文化を考える上で重要な遺跡です。
松前城(福山城)
松前城は、北海道唯一の日本式城郭であり、日本100名城にも選定されています。
歴史
松前城は、1854年(安政元年)に松前藩が築いた城です。ロシアの南下に備えるため、幕府の命により築城されました。それ以前の松前氏の居城は「福山館」と呼ばれる館でしたが、海防の必要性から本格的な城郭として再築されたのです。戊辰戦争では旧幕府軍の土方歳三率いる部隊に攻略されるという歴史も持ちます。
見どころ
松前城の天守は、1949年の火災で焼失しましたが、1961年に鉄筋コンクリート造で外観復元されました。内部は松前藩の歴史を紹介する資料館となっています。本丸御門は火災を免れた現存建造物で、国の重要文化財に指定されています。城の周囲には約250種、1万本の桜が植えられており、北海道有数の桜の名所として知られています。桜の見頃は例年5月上旬から中旬です。
アクセス
JR木古内駅からバスで約1時間30分、または函館市内から車で約2時間です。公共交通機関でのアクセスにはやや時間がかかるため、レンタカーの利用がおすすめです。
五稜郭
五稜郭は、幕末に築かれた日本初の西洋式城郭で、特別史跡に指定されています。
歴史
五稜郭は、1864年(元治元年)に箱館奉行所の防御施設として完成しました。フランスの軍事技術者の指導を受け、オランダの築城書を参考にして設計された星形の稜堡式城郭です。戊辰戦争の最終局面では、旧幕府軍の榎本武揚らが五稜郭を拠点として新政府軍に抵抗し、「箱館戦争」の舞台となりました。
見どころ
五稜郭の最大の特徴は、上空から見た星形の形状です。隣接する五稜郭タワー(高さ107メートル)に上ると、星形の全体像を一望できます。城内には2010年に復元された箱館奉行所があり、幕末の行政施設の内部を見学できます。堀に沿って約1,600本の桜が植えられており、5月上旬には桜の名所としても賑わいます。冬季には堀が凍結し、星形の堀に沿ってイルミネーションが施される「五稜星の夢」というイベントも開催されます。
アクセス
JR函館駅から市電で約15分、「五稜郭公園前」下車後徒歩約15分です。函館市内の観光と組み合わせて訪問しやすい立地にあります。
根室半島チャシ跡群
根室半島チャシ跡群は、日本100名城の第1番に選定されたチャシ遺跡群です。
歴史
根室半島には、24か所のチャシ跡が確認されており、そのうち特に保存状態の良いものが国の史跡に指定されています。これらのチャシは、16世紀から18世紀頃にアイヌの人々によって築かれたと考えられています。軍事的な防御施設としての機能のほか、祭祀や談合の場としても使われていた可能性があると言われています。
見どころ
代表的なチャシとして「ヲンネモトチャシ跡」があります。太平洋に突き出た岬の先端に築かれており、半円形の壕と土塁の跡を確認できます。周囲は広大な自然が広がり、天候がよければ北方領土の歯舞群島を望むことができます。チャシの規模は本州の城と比べると小さいですが、自然と一体化した独特の雰囲気は他では味わえないものです。
日本100名城スタンプ
日本100名城のスタンプは、根室市歴史と自然の資料館で押すことができます。チャシ跡自体は無料で見学できますが、案内板はあるものの整備は最小限のため、事前に情報を収集して訪問するのがおすすめです。
アクセス
JR根室駅から車で約30分です。公共交通機関でのアクセスは限られているため、レンタカーの利用が推奨されます。根室は日本最東端の都市であり、城めぐりとあわせて最東端の旅を楽しむのもよいでしょう。
志苔館跡
志苔館跡は、函館市にある中世の館跡です。
歴史と見どころ
志苔館は、15世紀頃に和人が築いた防御施設で、道南十二館のひとつに数えられています。1457年のコシャマインの戦いで陥落したと伝えられています。現在は土塁と壕の跡が残されており、国の史跡に指定されています。丘陵上に位置し、津軽海峡を見渡す眺望が得られます。
アクセス
函館空港から車で約5分という好立地にあります。函館観光の合間に立ち寄りやすいスポットです。
勝山館跡
勝山館跡は、上ノ国町にある中世の山城跡です。
歴史と見どころ
勝山館は、松前氏の祖である武田信広が15世紀後半に築いたとされる城です。発掘調査により、和人とアイヌの人々の交流を示す遺物が多数出土しており、北海道の歴史を考える上で重要な遺跡です。国の史跡に指定されており、ガイダンス施設も整備されています。標高約159メートルの夷王山からは日本海を一望できます。
アクセス
JR木古内駅から車で約30分です。松前城とあわせて訪問するとよいでしょう。
北海道の城めぐりのコツ
北海道の城めぐりならではの注意点とコツを紹介します。
移動距離が長い
北海道は広大なため、各城郭遺跡間の移動距離が非常に長いです。松前城から根室半島チャシ跡群までは、車で片道8時間以上かかります。効率的に回るためには、レンタカーの利用と余裕のある日程が不可欠です。
季節の選択
北海道の城めぐりに最適な季節は、5月から10月です。冬季は積雪により城跡へのアクセスが困難になる場合があり、屋外の遺跡は見学が制限されることもあります。5月の桜の時期は、松前城と五稜郭の桜を同時に楽しめるおすすめの季節です。
野生動物への注意
チャシ跡など自然の中にある遺跡を訪れる際は、ヒグマへの注意が必要です。熊鈴を携帯し、単独での行動は避けましょう。
まとめ
北海道の城郭は、和人の松前城や五稜郭と、アイヌのチャシ跡という異なる文化の城郭遺跡が共存する独特の地域です。本州以南の城とは異なる歴史と風景を楽しむことができ、日本の城郭文化の多様性を実感できます。広大な北海道を巡る城めぐりの旅は、城だけでなく雄大な自然も堪能できる贅沢な体験です。