犬山城の歴史と見どころ|国宝天守と木曽川の絶景
愛知県犬山市にそびえる犬山城は、現存する日本最古級の天守を持つ国宝の城です。木曽川のほとりの小高い丘に築かれたその姿は「白帝城」とも称され、李白の漢詩になぞらえた美しい景観で知られています。国宝五城のひとつに数えられ、日本100名城にも選定されています。この記事では、犬山城の歴史や天守の特徴、見どころ、城下町の魅力まで詳しくご紹介します。
犬山城の歴史
築城と戦国の動乱
犬山城は、天文6年(1537年)に織田信長の叔父・織田信康によって築かれたと伝えられています。ただし、築城の正確な時期については諸説あり、それ以前から砦が存在していたとも言われています。木曽川を天然の堀として利用した丘城で、尾張と美濃の国境という戦略的要衝に位置していました。
戦国時代には織田氏、豊臣氏の配下の武将たちが入れ替わり城主を務め、小牧・長久手の戦い(1584年)では豊臣方の拠点として重要な役割を果たしました。
成瀬家の城
関ヶ原の戦い後、慶長6年(1601年)に小笠原吉次が城主となり、その後、慶長12年(1607年)に尾張藩付家老の成瀬正成が城主となりました。以後、成瀬家が明治維新まで9代にわたって犬山城を守り続けます。成瀬家の時代に天守の改修が行われ、現在の姿に近い形が整ったとされています。
近代の変遷
明治維新後、犬山城は廃城となり、天守以外の建物の多くが取り壊されました。明治24年(1891年)の濃尾地震では天守の一部が損壊しましたが、修復を条件に旧藩主の成瀬家に城が譲渡されるという異例の措置がとられました。以後、成瀬家が個人所有の城として維持管理を続け、2004年に財団法人犬山城白帝文庫に移管されました。昭和10年(1935年)に国宝に指定され、現在は日本を代表する城郭建築のひとつとして多くの来訪者を迎えています。
天守の建築的特徴
望楼型天守の構造
犬山城天守は、三層四階地下二階の望楼型天守です。望楼型とは、低層部の入母屋屋根の上に望楼(物見櫓)を載せた形式で、初期の天守に多く見られる構造です。犬山城天守は、この望楼型の特徴を色濃く残しており、天守建築の変遷を知るうえで極めて重要な存在です。
唐破風と高欄
天守の最上階には廻縁(まわりえん)と高欄が設けられており、外に出て四方の景色を一望できます。南側には唐破風(からはふ)の装飾が施され、城の威厳を高めています。最上階から見渡す木曽川の流れと濃尾平野の眺望は、犬山城ならではの絶景です。
付櫓と石垣
天守台の石垣は自然石を積んだ野面積みで、戦国時代の雰囲気を色濃く残しています。天守の入口には付櫓(つけやぐら)が設けられており、敵の侵入を防ぐ防御機能を担っていました。付櫓を通過しないと天守内部に入れない構造は、実戦を想定した設計と言えます。
見どころスポット
天守内部
天守内部は急な階段を上りながら各階を見学できます。1階・2階は城の歴史や武具に関する展示がなされており、3階は「破風の間」と呼ばれる唐破風の内部空間を体験できます。最上階の4階は四方に開けた展望空間で、木曽川の悠々とした流れ、晴れた日には御嶽山や岐阜城を望むことができます。
木曽川からの眺望
犬山城の象徴的な風景は、木曽川越しに望む天守の姿です。犬山橋や木曽川河畔の遊歩道からは、川面に映る城の美しい姿を堪能できます。特に桜の季節には、川沿いの桜並木と天守の競演が見事です。木曽川の鵜飼い(毎年6月から10月頃)の時期には、かがり火に照らされた天守を川上から眺めるという贅沢な体験もできます。
城下町散策
犬山城の城下町は、江戸時代の町割りが残る風情ある通りです。本町通りを中心に、古い町家を利用したカフェや土産物店が軒を連ね、食べ歩きを楽しめます。犬山名物の田楽や五平餅、串グルメなど多彩な食文化も魅力のひとつです。城とセットで城下町を散策すれば、半日以上楽しめる充実した観光が可能です。
三光稲荷神社と針綱神社
城への登城路の途中には三光稲荷神社と針綱神社があります。三光稲荷神社はピンク色のハート型絵馬で知られ、縁結びのご利益があるとされています。針綱神社は犬山の産土神で、毎年4月に開催される犬山祭の舞台でもあります。犬山祭は車山(やま)と呼ばれる山車が城下を練り歩く豪華絢爛な祭りで、ユネスコ無形文化遺産にも登録されています。
犬山城と他の国宝天守
国宝五城との比較
現在、国宝に指定されている天守は、姫路城、松本城、彦根城、犬山城、松江城の5城です。犬山城はこの中で最も小規模な天守ですが、望楼型天守としての古い形式を残している点で建築史的価値が非常に高いとされています。他の国宝天守がいずれも層塔型や複合型であるのに対し、犬山城は初期天守の素朴な姿を今に伝えています。
現存12天守のひとつ
犬山城は現存12天守のひとつでもあります。江戸時代以前に築かれた天守がそのまま残っている城は全国で12城しかなく、そのうち5城が国宝、7城が重要文化財に指定されています。犬山城天守は、幾度かの修理を経てはいるものの、基本的な構造は築城当時のものが維持されていると考えられています。
アクセスと見学情報
交通手段
犬山城へは、名鉄犬山線「犬山遊園駅」から徒歩約15分、または「犬山駅」から徒歩約20分です。名古屋駅から名鉄で約30分とアクセスも良好です。車の場合は、城の近くに有料駐車場が複数あります。土日祝日は混雑するため、犬山駅周辺の駐車場を利用して徒歩で向かうのもよいでしょう。
見学案内
開館時間は9時から17時(入場は16時30分まで)で、休館日は12月29日から31日です。入場料は大人550円、小・中学生110円です。天守内は急な階段があるため、歩きやすい靴での訪問をおすすめします。所要時間は天守の見学だけなら約30分から1時間、城下町散策を含めると3時間程度を見込むとよいでしょう。
おすすめの訪問時期
桜の季節(3月下旬から4月上旬)は天守と桜の競演が美しく、最も人気の高い時期です。夏の木曽川鵜飼いの時期や、秋の紅葉シーズンもおすすめです。冬は訪問者が少なく、澄んだ空気の中で遠くの山並みまで見渡せる日が多くなります。
まとめ
犬山城は、国宝天守の風格と木曽川の絶景が織りなす唯一無二の城です。望楼型天守の貴重な建築、城下町の賑わい、四季折々の自然美など、何度訪れても新しい魅力に出会えます。名古屋から気軽にアクセスできる立地も魅力で、城めぐり初心者にもおすすめの名城です。最上階の廻縁から木曽川を見下ろす体験は、きっと忘れがたい思い出になるでしょう。