秋の星空ガイド|ペガスス座の四辺形とアンドロメダ銀河
秋の星空は、夏の華やかな天の川が西に傾き、やや寂しげな印象を受けるかもしれません。しかし、ペガススの大四辺形を手がかりにすれば、ギリシア神話ゆかりの星座群をたどることができ、肉眼でも見える系外銀河アンドロメダ銀河M31との出会いが待っています。透明度が高くなり始める秋は、実は天体観測に恵まれた季節です。
この記事では、秋の代表的な星座の見つけ方、注目の天体、そして秋の観測を楽しむコツを紹介します。
秋の星空の特徴
秋の夜空には独特の雰囲気があります。その特徴を知ると、秋の星空の魅力がより深くわかります。
明るい星が少ない領域
秋の南の空には一等星がほとんどありません。みなみのうお座のフォーマルハウト(1.2等)が「秋のひとつ星」と呼ばれるほど、周囲に明るい星が少ない中で孤独に輝いています。フォーマルハウトは地球から約25光年の距離にあり、周囲に塵の円盤が発見されている若い恒星です。
天の川の位置
秋の天の川はカシオペヤ座からペルセウス座を通り、比較的低い位置を流れています。夏のように頭上を横切る壮大な姿は見られませんが、カシオペヤ座周辺では双眼鏡で多くの散開星団を楽しめます。
透明度が回復する時期
夏の高温多湿な大気から秋の乾いた大気へ移行するにつれ、空の透明度が改善していきます。特に10月以降は冬に近い透明度が得られることもあり、淡い天体の観測に適した条件が整います。
ペガススの大四辺形
秋の星空のナビゲーションの起点となるのが、ペガスス座にある大きな四辺形です。
四辺形の見つけ方
ペガススの大四辺形は、秋の宵に南から南東の空の高い位置に見える、ほぼ正方形に近い大きな四角形です。各辺の長さは約15度(腕を伸ばした拳1.5個分程度)あり、かなり大きいのが特徴です。4つの角を構成する星はいずれも2等星から3等星で、都市部でも条件が良ければ見つけられます。
なお、四辺形の北東の角にあるアルフェラッツは、実はアンドロメダ座に属する星です。歴史的にはペガスス座とアンドロメダ座の両方に含まれていましたが、現在の国際天文学連合(IAU)の区分ではアンドロメダ座の星とされています。
四辺形の内部
ペガススの四辺形の内部にはあまり明るい星がなく、目立つ星がいくつ見えるかは空の暗さの指標になります。光害のない場所では10個以上の星が見えますが、都市部では1つも見えないこともあります。この「四辺形テスト」は、その場所の空の暗さを簡易的に判定する方法として知られています。
ペガスス座の神話
ペガスス座はギリシア神話の翼のある馬ペガサスを表しています。英雄ペルセウスがメデューサを退治した際、メデューサの血から生まれたとされる天馬です。星座では馬の上半身だけが描かれ、四辺形が胴体にあたります。
アンドロメダ座とアンドロメダ銀河
ペガススの四辺形から東にたどると、秋の星空で最も有名な天体であるアンドロメダ銀河に到達します。
アンドロメダ座の見つけ方
四辺形の北東の角アルフェラッツから、東に向かって星が弧を描くように並んでいるのがアンドロメダ座です。アルフェラッツからミラク、アルマクと3つの星がほぼ等間隔に並んでおり、この列が目印です。
アンドロメダ銀河M31の探し方
アンドロメダ銀河M31を見つけるには、アンドロメダ座のミラク(2番目の星)から北に2つ星をたどります。ミラクの上にミュー星、ニュー星と暗い星が並んでおり、ニュー星のすぐそばにM31があります。肉眼でも光害の少ない場所であれば、ぼんやりとした楕円形の光の斑点として見つけることができます。
アンドロメダ銀河の正体
アンドロメダ銀河は地球から約250万光年の距離にある渦巻銀河で、局部銀河群のなかで最大の銀河です。直径は約22万光年と推定され、天の川銀河(直径約10万光年)より大きいとされています。約1兆個の恒星を含み、肉眼で見える最も遠い天体のひとつです。
双眼鏡では中心部の明るい核と、それを取り囲む楕円形のぼんやりとした広がりが見えます。口径20センチメートル以上の望遠鏡では、伴銀河であるM32やNGC 205(M110)も視野内に確認でき、銀河のグループを実感できます。
カシオペヤ座とペルセウス座
秋の北の空には、一年を通じて見えやすいカシオペヤ座があり、その近くにペルセウス座が控えています。
カシオペヤ座の「W」
カシオペヤ座はアルファベットの「W」または「M」の形をした5つの星の並びで知られ、北極星を見つける手がかりにもなります。北斗七星と反対側の位置にあり、北斗七星が沈んでいる時期にはカシオペヤ座が北極星を探す目印になります。
カシオペヤ座周辺の散開星団
カシオペヤ座は天の川の中にあるため、周辺には散開星団が多数あります。NGC 457は「ふくろう星団」とも呼ばれ、星の並びが翼を広げたふくろうのように見えるユニークな星団です。M52は約5000光年の距離にある散開星団で、双眼鏡でも小さなまとまりとして確認できます。
ペルセウス座の二重星団
ペルセウス座の見どころといえば二重星団(h-χ Persei、NGC 869とNGC 884)です。2つの散開星団が隣り合っており、双眼鏡の同じ視野に2つの星団が収まる美しい眺めが楽しめます。それぞれ約7500光年の距離にあり、望遠鏡では色の異なる星が散りばめられた宝石箱のような姿を見せてくれます。
秋のその他の見どころ
秋の星空にはほかにも注目すべき天体や見どころがあります。
みずがめ座とうお座
黄道星座であるみずがめ座とうお座は秋の南の空に位置しますが、どちらも暗い星が多く見つけにくい星座です。みずがめ座には球状星団M2があり、口径10センチメートル以上の望遠鏡で星が分解し始める美しい天体です。
くじら座のミラ
くじら座にはミラ(オミクロン星)という有名な変光星があります。約332日の周期で2等級から10等級まで明るさが変化する長周期変光星で、極大の時期には肉眼で簡単に見つかりますが、極小の時期には望遠鏡がなければ見えません。
フォーマルハウトと系外惑星
みなみのうお座のフォーマルハウトは、ハッブル宇宙望遠鏡によって周囲の塵の円盤が直接撮像された恒星として有名です。かつて系外惑星の直接撮影と発表されたものは、その後の研究で塵の雲である可能性が指摘されており、議論が続いています。
秋の天体イベント
秋には注目すべき天体イベントがいくつかあります。
オリオン座流星群
10月下旬に極大を迎えるオリオン座流星群は、ハレー彗星が残した塵の中を地球が通過する際に見られます。1時間あたり20個前後の出現が期待でき、対地速度が速いため明るい流星が多いのが特徴です。放射点は深夜に高く昇るため、深夜から明け方が見ごろです。
おうし座流星群
11月上旬から中旬にかけてのおうし座流星群は、出現数は少ないものの、ゆっくりとした明るい火球が出現することがあり「ハロウィン火球」とも呼ばれます。速度が遅い流星は印象的で、見ごたえがあります。
秋から冬への星座の移り変わり
11月下旬になると、東の空にはオリオン座やおうし座が昇ってきます。秋の星座が南中し、冬の星座が東に現れるこの時期は、ひと晩で2つの季節の星空を楽しめる贅沢な時間帯です。
秋の観測を楽しむコツ
秋の天体観測を快適に行うための実践的なポイントです。
寝転がって観る
秋の見どころの多くは頭上近くの高い空にあります。首を上げ続けると疲れるため、レジャーシートやリクライニングチェアを持参して寝転がった姿勢で観察すると楽です。地面からの冷えを防ぐため、断熱性のあるマットを敷くとよいでしょう。
秋の夜長を活かす
秋は日没が早くなり、夜が長くなっていく時期です。夕方から深夜にかけて、秋の星座から冬の星座への移り変わりをゆっくり追うことができます。早い時間帯に秋の星座を楽しみ、深夜にはオリオン座が昇ってくるのを待つという楽しみ方もあります。
夜露対策
秋は放射冷却で気温が下がりやすく、望遠鏡や双眼鏡のレンズに夜露が付きやすい季節です。レンズヒーターやフード(露よけ)を使って夜露を防ぎましょう。タオルで拭くとレンズを傷つける可能性があるため、ヒーターで温めて蒸発させるのが安全です。
まとめ
秋の星空は、ペガススの大四辺形を起点にアンドロメダ座、カシオペヤ座、ペルセウス座と、ギリシア神話にまつわる星座群をたどる楽しさがあります。なかでもアンドロメダ銀河M31は、約250万光年の彼方にある銀河を肉眼で確かめられるという特別な体験を与えてくれます。
明るい星は少ないものの、カシオペヤ座周辺の散開星団やペルセウス座の二重星団など、双眼鏡や望遠鏡で見ごたえのある天体が数多くあります。透明度が回復し始める秋の夜に、じっくりと星空と向き合ってみてください。