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ブルーオーシャン戦略とは|競争のない市場を創る方法

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ブルーオーシャン戦略は、W・チャン・キムとレネ・モボルニュが提唱した経営戦略論です。既存の競争が激しい市場(レッドオーシャン)ではなく、競争のない新しい市場空間(ブルーオーシャン)を創り出すことで、高い成長と利益を実現する考え方を示しています。

レッドオーシャンとブルーオーシャンの違い

ブルーオーシャン戦略を理解するためには、まず2つの市場の性質を把握する必要があります。

レッドオーシャン

レッドオーシャンとは、既存の市場空間を指します。業界の境界やルールが明確に定まっており、企業は限られたパイを奪い合う競争を繰り広げています。価格競争や機能競争が激化し、利益率が低下しやすい状態です。「血で赤く染まった海」というイメージから名付けられました。

ブルーオーシャン

ブルーオーシャンとは、まだ開拓されていない市場空間のことです。競争相手が存在しないか極めて少ない状態であり、需要を新たに創造することで高い成長を実現できます。既存の業界の枠にとらわれず、新しい価値を提供する点が特徴です。

基本的な考え方

ブルーオーシャン戦略では、コストリーダーシップと差別化の二者択一を超えて、「バリューイノベーション(価値革新)」を追求します。

バリューイノベーション

バリューイノベーションとは、買い手にとっての価値を高めながら、同時にコストを下げることです。従来の戦略論では「差別化するとコストが上がる」「コストを下げると差別化が難しい」とされてきましたが、提供する価値の要素を根本的に見直すことで、この二律背反を克服します。

非顧客の重視

既存の顧客だけでなく、現在その市場を利用していない「非顧客」に注目します。非顧客が市場に参加しない理由を理解し、その障壁を取り除くことで新たな需要を創出します。非顧客は3つの層に分けて分析します。

分析ツール:戦略キャンバス

戦略キャンバスは、ブルーオーシャン戦略の中核的な分析ツールです。

戦略キャンバスの構成

横軸に業界が競争している要素(競争要因)を並べ、縦軸に各要素の提供レベル(高・低)を取ります。自社と競合の提供レベルをプロットし、折れ線グラフで結ぶと「価値曲線」が描けます。

価値曲線の読み方

業界内の企業の価値曲線が類似している場合、それは激しい競争(レッドオーシャン)を意味します。差別化するためには、競合とは明らかに異なる形状の価値曲線を描く必要があります。

戦略キャンバスの作成手順

まず業界の主要な競争要因を5個から10個程度洗い出します。次に各要因について自社と主要な競合の提供レベルを評価し、グラフ上にプロットします。最後に、どの要因のレベルを変化させれば新しい価値曲線を描けるかを検討します。

実践ツール:ERRCグリッド

戦略キャンバスで描いた新しい価値曲線を実現するために、ERRCグリッド(4つのアクション・フレームワーク)を使います。

Eliminate(取り除く)

業界では当然とされているが、実は顧客にとって不要な要素を特定して取り除きます。長年の慣習で提供し続けている要素が、実際には顧客価値に貢献していないことは少なくありません。

Reduce(減らす)

業界標準を大幅に下回るレベルまで減らせる要素を見つけます。過剰品質や過剰サービスを削減することで、コスト構造を改善できます。

Raise(増やす)

業界標準を大幅に上回るレベルまで引き上げるべき要素を特定します。顧客が本当に重視している要素に集中して投資を行います。

Create(付け加える)

業界がこれまで提供してこなかった全く新しい要素を創造します。非顧客の潜在的なニーズを掘り起こし、新たな価値を提供します。

具体例:シルク・ドゥ・ソレイユの事例

ブルーオーシャン戦略の代表例として、シルク・ドゥ・ソレイユがよく引用されます。

取り除いた要素

従来のサーカスにあった動物のショー、スター・パフォーマーの起用、複数リングでの同時演技を排除しました。動物の維持費やスター出演者のギャラは大きなコスト要因だったため、これらの排除でコストを大幅に削減しています。

減らした要素

ユーモアやスリルといった要素は残しつつも、従来のサーカスほど過激なものにはしませんでした。安全面のコストも低減しています。

増やした要素

芸術性の高い演出、洗練された舞台美術、テーマ性のあるストーリー構成など、演劇やミュージカルの要素を大幅に取り入れました。

付け加えた要素

快適な座席、上質な音楽、統一された世界観など、サーカス業界になかった要素を新たに創造しました。結果として、子供向けの大衆娯楽だったサーカスを、大人が楽しめるプレミアムなエンターテインメントに変革しました。

ブルーオーシャン戦略の強みと限界

強み

最大の強みは、競争回避による高い利益率の実現です。競合がいない市場では価格競争に巻き込まれず、先行者として高い利益を得られます。また、非顧客に注目することで市場規模そのものを拡大できる点も大きなメリットです。

限界

ブルーオーシャンは永続的なものではありません。成功した市場には競合が参入し、やがてレッドオーシャン化します。また、全く新しい市場を創造するにはリスクが伴い、顧客の受容性が不確実な場合もあります。市場調査や顧客理解が不十分なまま進めると、需要のない市場を作ってしまう恐れもあります。

ブルーオーシャン戦略を実践するステップ

ステップ1:現在の戦略を可視化する

戦略キャンバスを使い、自社と競合の現在の価値曲線を描きます。業界全体の競争パターンを客観的に把握する段階です。

ステップ2:非顧客を分析する

市場に参加していない非顧客を3つの層に分け、彼らが市場を利用しない理由や潜在的なニーズを調査します。

ステップ3:ERRCグリッドで戦略を設計する

4つのアクション(取り除く・減らす・増やす・付け加える)を通じて、新しい価値曲線を設計します。

ステップ4:事業モデルを構築する

戦略的価格設定、ターゲットコスト、導入戦略を含む事業モデル全体を設計します。

まとめ

ブルーオーシャン戦略は、競争の激しい既存市場から離れ、新しい市場空間を創造するための戦略フレームワークです。戦略キャンバスで業界の競争パターンを可視化し、ERRCグリッドで提供価値の再構築を行うことが実践の基本となります。既存の競争に疲弊している場合は、まず自社の戦略キャンバスを描くことから始めてみてください。

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