受身形の敬語表現|「れる・られる」の正しい使い方
「れる」「られる」は受身・可能・自発・尊敬の4つの意味を持つ助動詞です。敬語としては「社長が話される」のように尊敬の意味で使いますが、受身との区別がつきにくく混乱しやすい表現でもあります。この記事では、受身形と敬語の関係を整理し、「れる・られる」の正しい敬語用法を解説します。
「れる・られる」の4つの用法
まず、「れる・られる」が持つ4つの意味を確認しましょう。
受身用法
動作を受ける側を主語にする用法です。
- 「先輩に叱られた」(叱る動作を受ける)
- 「雨に降られた」(雨の影響を受ける)
- 「お客様に褒められた」(褒める動作を受ける)
尊敬用法
目上の人の動作に「れる・られる」を付けて敬意を表す用法です。
- 「部長が話される」(部長の動作を尊敬)
- 「社長が出席される」(社長の動作を尊敬)
- 「先生がお帰りになられる」(二重敬語に注意)
可能用法
「〜できる」という意味を表す用法です。
- 「この料理は一人でも作れる」
- 「明日なら参加できられる」(「できる」と重複するため不自然)
自発用法
自然にそうなるという意味を表す用法です。
- 「故郷のことが思い出される」
- 「将来が案じられる」
尊敬語としての「れる・られる」
基本的な使い方
「れる・られる」を尊敬語として使うのは、もっとも簡便な尊敬表現です。
- 五段活用動詞:「れる」を付ける → 話す→話される、読む→読まれる
- 一段活用動詞:「られる」を付ける → 食べる→食べられる、見る→見られる
- サ変動詞:「される」を付ける → 出席する→出席される
特別な尊敬動詞との使い分け
「れる・られる」による尊敬は手軽ですが、特別な尊敬動詞があればそちらを使うほうが丁寧です。
| 普通語 | 「れる・られる」尊敬 | 特別な尊敬動詞 |
|---|---|---|
| 言う | 言われる | おっしゃる |
| 食べる | 食べられる | 召し上がる |
| 行く | 行かれる | いらっしゃる |
| 見る | 見られる | ご覧になる |
| する | される | なさる |
| くれる | くれられる(不自然) | くださる |
| 知る | 知られる(受身と紛らわしい) | ご存じだ |
「れる・られる」尊敬の丁寧さ
「れる・られる」尊敬は、尊敬語の中ではもっとも軽い敬意です。敬意のレベルを整理すると次のようになります。
- 低:話される(「れる」尊敬)
- 中:お話しになる(「お〜になる」尊敬)
- 高:お話しくださる(「お〜くださる」尊敬)
ビジネスでは「お〜になる」以上の表現を使うほうが無難です。
受身と尊敬の見分け方
文脈による判断
「れる・られる」が尊敬か受身かは、文脈で判断する必要があります。
- 「社長が褒められた」→ 尊敬(社長が誰かを褒めた)か受身(社長が誰かに褒められた)か不明
このような曖昧さを避けるには、別の表現に言い換えるのが確実です。
- 尊敬の意味なら:「社長がお褒めになった」
- 受身の意味なら:「社長は○○様にお褒めいただいた」
曖昧になりやすい動詞
特に曖昧になりやすい動詞があります。
- 「呼ばれる」→ 尊敬(呼ぶ)か受身(呼ばれる)か
- 「選ばれる」→ 尊敬(選ぶ)か受身(選ばれる)か
- 「注意される」→ 尊敬(注意する)か受身(注意される)か
曖昧さを解消する方法
曖昧さを避けるために、以下の方法が有効です。
- 尊敬語は「お〜になる」形を使う:「社長がお選びになった」
- 受身は「〜ていただく」形を使う:「社長にお選びいただいた」
- 主語と目的語を明確にする:「社長が新商品をお選びになった」
二重敬語に注意
よくある二重敬語パターン
「れる・られる」を他の尊敬表現と組み合わせると二重敬語になります。
- 誤:「おっしゃられる」(「おっしゃる」+「れる」で二重敬語)
- 正:「おっしゃる」
- 誤:「お帰りになられる」(「お帰りになる」+「れる」で二重敬語)
- 正:「お帰りになる」
- 誤:「ご覧になられる」(「ご覧になる」+「れる」で二重敬語)
- 正:「ご覧になる」
二重敬語が慣用として認められる例
一部の二重敬語は、慣用として定着しているため許容される場合があります。
- 「お召し上がりになる」(「召し上がる」+「お〜になる」)
- 「お見えになる」(慣用表現として定着)
ただし、ビジネス文書では二重敬語は避けるのが原則です。
二重敬語を防ぐコツ
二重敬語を防ぐには、まず特別な尊敬動詞があるかどうかを確認しましょう。特別な尊敬動詞がある場合は、「れる・られる」を付ける必要はありません。
- 「言う」→ おっしゃる(これだけで尊敬語。「られる」は不要)
- 「食べる」→ 召し上がる(これだけで尊敬語。「られる」は不要)
- 「くれる」→ くださる(これだけで尊敬語。「られる」は不要)
ビジネスでの実践的な使い方
「れる・られる」尊敬が適切な場面
「れる・られる」尊敬は軽い敬意ですが、以下の場面では自然に使えます。
- 社内の会話:「課長は何時に戻られますか」
- カジュアルな場面:「先輩も参加されるんですか」
- 文章の中で繰り返しを避けたいとき:一度「お〜になる」を使い、二度目は「れる」で変化をつける
「お〜になる」を使うべき場面
以下の場面では「れる・られる」ではなく「お〜になる」を使いましょう。
- 社外の方への対応:「○○様がお越しになりました」
- フォーマルな文書:「ご出席になる皆様へ」
- 電話対応:「○○はただいま席を外しております。お戻りになりましたら折り返しお電話いたします」
メールでの使い分け
メールでは「れる・られる」尊敬よりも、「お〜になる」「〜いただく」を使うのが一般的です。
- カジュアル:「ご確認されましたか」
- ビジネス:「ご確認いただけましたでしょうか」
まとめ
「れる・られる」は尊敬語として使えますが、受身との混同や二重敬語のリスクがあります。特別な尊敬動詞がある場合はそちらを優先し、ない場合は「お〜になる」形を使うのがビジネスでは安全です。受身と尊敬の曖昧さを避けるためにも、主語と動作の関係を明確にすることを心がけましょう。