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旧道のトンネル|出口が見えない怖い話

ショートホラー トンネル 旧道 怖い話
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大学の友人三人と、心霊スポット巡りをしていた夏の話だ。今思えば馬鹿なことをしたと思う。

旧道

県道から分岐する旧道があった。現在は新しいトンネルが開通しているため、旧道はほとんど使われていない。車一台がやっと通れる幅で、路面は苔と落ち葉に覆われていた。

旧道の先に古いトンネルがある。戦前に作られたもので、現在は通行止めの看板が立っている。しかしゲートは壊れており、人が通れる隙間があった。

「ネットで心霊スポットに載ってたんだ。中で声が聞こえるらしい」

友人の一人がそう言って、トンネルに向かって歩き始めた。

トンネルの入り口はコンクリートの枠で囲まれ、苔むしている。中は真っ暗で、懐中電灯なしでは一歩も進めない。長さは三百メートルほどと聞いていた。

四人はスマートフォンのライトを点けて、トンネルに入った。

中の様子

トンネルの中はひんやりとして、外の夏の暑さが嘘のようだった。壁からは水が滲み出し、天井からぽたぽたと滴が落ちている。足元には水たまりがあり、靴が濡れた。

百メートルほど進んだところで、後ろを振り返った。入り口の光が小さな半円形に見える。前方にも、同じくらいの大きさで出口の光が見える。ちょうど中間地点だ。

「何も起きないな」

友人の一人が拍子抜けしたように言った。声がトンネルの壁に反響する。

さらに進んだ。しかし、奇妙なことに気づいた。

前方の出口の光が、近づいてこない。歩いているのに、出口の光は同じ大きさのままだった。

近づかない出口

「おかしくないか」

私が言った。

「出口の光がずっと同じ大きさだ。もう二百メートルは歩いたはずなのに」

全員が足を止めた。前方を見ると、出口の光は遠くにぽつんと見えている。後ろを振り返ると、入り口の光も同じ距離に見える。

どちらにもたどり着けない場所に、立っていた。

「戻ろう」

誰かが言った。四人は踵を返し、入り口に向かって歩き始めた。

五分歩いた。十分歩いた。入り口の光は近づいてこなかった。

走った。全員で走った。靴が水たまりを跳ね上げる音がトンネルに響く。それでも光は遠いままだった。

「待って。静かに」

一人が立ち止まった。全員が息を殺した。

水滴の音に混じって、別の音が聞こえた。足音だ。四人以外の足音が、トンネルの奥から近づいてきている。

四人は無言で走り出した。理屈はもうどうでもよかった。ただ出口に向かって全力で走った。

不意に、スマートフォンのライトが全員同時に消えた。完全な暗闇。四人の叫び声がトンネルに反響した。

次の瞬間、足元のコンクリートがなくなり、砂利の感触に変わった。顔に夜風が当たった。

脱出

気がつくと、四人はトンネルの入り口の外に立っていた。旧道の砂利の上だ。虫の声が聞こえる。蒸し暑い夏の空気が体を包んだ。

トンネルの入り口を見た。暗い穴が口を開けている。中からは何も聞こえない。

時計を見た。トンネルに入ったのは午後九時だった。今は午前一時を過ぎていた。体感では三十分もいなかったはずなのに、四時間が経過していた。

四人は何も言わずに車に戻り、旧道を離れた。帰りの車中で、誰一人あの体験について語らなかった。

あれから数年経つが、あのトンネルの話は四人の間で暗黙のうちに禁じられている。ただ、あの夜以来、四人とも閉所恐怖症の傾向が出るようになった。それだけが、あの体験が現実だったことを証明している。

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