幼馴染の記憶|意味がわかると怖い話
小学三年生のとき、父の転勤で引っ越した。新しい学校に馴染めず、前の学校の友達が恋しかった。
再会
転校して一週間目。クラスの女の子が話しかけてきた。
「ねえ、あなた前の学校、〇〇小学校でしょう。私も去年まであそこにいたんだよ」
驚いた。名前はユカちゃんといった。確かにどこかで見た顔だった。
「覚えてない?同じクラスだったんだよ」
言われてみれば、そんな気もする。ユカちゃんは前の学校の先生の話や校庭の遊具の話をしてくれた。全部合っていた。
私はユカちゃんと仲良くなった。唯一、前の学校の思い出を共有できる友達だった。
違和感
ユカちゃんとの会話で、一つだけ気になることがあった。ユカちゃんは前の学校の「場所」や「物」の話はするのに、「人」の話を一切しなかった。
「〇〇先生、面白かったよね」と私が言っても、「うん、そうだね」と曖昧に返すだけ。「△△ちゃんと遊んだの覚えてる?」と聞くと、話題を変えてしまう。
ある日、思い切って聞いた。
「ユカちゃんは前の学校で誰と仲良かったの?」
ユカちゃんは少し黙って、微笑んだ。
「私はね、あなたとだけ仲良くしたかったの」
変な答えだと思った。でもユカちゃんが優しく笑うので、それ以上は聞かなかった。
母の言葉
その夜、母に聞いた。
「ユカちゃんっていう子が、前の学校から転校してきたんだって。知ってる?」
母は少し考えて首を傾げた。
「ユカちゃん?知らないわねえ。前の学校にそんな名前の子いたかしら」
「同じクラスだったって言ってたよ」
母は前の学校のクラス写真を引っ張り出してきた。写真に写っている全員の顔を確認した。
ユカちゃんに似た女の子は一人もいなかった。
翌日、学校でユカちゃんに会ったとき、初めて怖くなった。
ユカちゃんは前の学校のことを何でも知っている。場所も物も正確に覚えている。でも、そこにいた人のことは何も知らない。
まるで、その学校に「人がいない状態で」行ったことがあるかのように。
ユカちゃんは今日も笑っている。
「放課後、一緒に帰ろう」
私は頷いた。断れなかった。